さかさまつ毛とは

まつげは本来眼球には当たらないように生えているのですが、色々な原因により眼球に接触してしまうことがあり、一般に逆さまつげと呼ばれます。

症状

まつげが目に当たってしまうため「目がゴロゴロする」「何かが目に当たっている」というのが典型的な症状です。

原因・分類

逆さまつげは大きく二つに分けられます。一つは加齢によって起こる事が多い眼瞼内反症、もう一つは小児や若い人に多い睫毛内反症です。その他には美容外科手術の合併症などがあります。

睫毛内反症
生まれつきのまぶたの形状によりまつげが眼球側を向いている
眼瞼内反症
加齢などにより組織が緩んでまぶた全体が眼球側にひっくり返ってしまっている
睫毛乱生
慢性炎症などにより本来生えるべきでない方向や場所にまつげが生えてしまっている
美容外科手術後の合併症
ハムラ法やグラマラスライン形成手術などに伴う合併症

これらを治療するのに必要な手術の内容は疾患ごとに異なるため、専門家による診察を経て適切な術式を選択しなくてはなりません。不適切な手術を行うと内反症が治らないのみならず、悪化する事もあります。

睫毛内反症

まぶたの向きは正常であるにも関わらずまつげ全体が眼球側に傾いている疾患です。小児や若い人に比較的多く、症状としてゴロゴロ感や痛みなどを生じます。特に6歳位までの幼児の場合、大人とは異なり言葉で目の異物感を表現する事が難しく「常に目をこすっている」「外に出るとまぶしがる」といったお子さんの様子を心配した親御さんが外来に連れてこられるケースが多いです。

治療法

睫毛内反症に対しては基本的に切開法を行います。これはまぶたの皮膚を一部切除した後に皮膚の下の組織に糸をかけてまつ毛の向きを正しい向きに修正する方法です。下眼瞼延長と言う専門的な術式を同時に行う場合もあります。
手術は局所麻酔で行い両眼で40分程度で終了します。局所麻酔での手術が難しい小児については全身麻酔で行います。

睫毛内反症手術・切開法
術前
術前のイメージ写真 術前のイメージ写真

まつげが常に目に当たっており黒目の広い範囲に傷があります

術後
術後のイメージ写真 術後のイメージ写真

まつげは適切な向きになり傷は治っています

リスク等

術後腫脹、血種、過矯正、手術瘢痕、再発、等

上まぶたの睫毛内反症手術・切開法
術前
術前のイメージ写真

上まぶたのまつげが黒目に当たっています

術後
術後のイメージ写真

二重が形成されまつげは黒目から離れています

眼瞼内反症

加齢による組織のゆるみによって下まぶたが回転してしまった状態です。まつげの眼球への接触により異物感や痛みが生じるため、定期的に眼科で抜いてもらい下眼瞼のテープ固定などを行っている患者さんもしばしば見られます。

治療法

眼瞼内反症に対する手術としては埋没法や切開法があります。
手術は局所麻酔で行い埋没法の場合片眼10分程度、切開法なら30分程度で終了します。

眼瞼内反症手術・切開法
術前
術前のイメージ写真 術前のイメージ写真

下まぶたが眼球に接触して目に傷がついています

術後
術後のイメージ写真 術後のイメージ写真

下まぶたは適切な位置に戻り目の傷は治っています

リスク等

術後腫脹、血種、過矯正、手術瘢痕、等

睫毛乱生症

慢性的な炎症などにより眼球側に向かってまつげが生えてしまったり、本来まつげが生えるべきではない場所にまつげが生えてしまっている状態です。この場合、まつげを残して目に当たらないようにするのが非常に難しいため、まつげを毛根ごと切り取ることにより治療を行います。

治療法

睫毛乱生症に対しては睫毛(しょうもう)(こん)切除を行います。
手術は局所麻酔で行い片眼10分程度で終了します。

美容外科手術後の睫毛内反症

ハムラ法やグラマラスライン形成の手術後に睫毛内反症になる事があります。これは主に結膜やその奥の組織(下眼瞼牽引筋群)の組織にひきつれ(瘢痕化)が出来てしまい、まぶたの組織が柔軟性を失ってしまう事により起こります。こういった合併症の修正は非常に難治性である事が多いですが、適切な手術により治療可能な場合もあります。

治療法

切開法や下眼瞼延長といった特殊な術式などを組み合わせて行います。

逆さまつげ手術の流れ

  • 診察

    まず細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)を使った眼科的な診察を行い、現在のまぶたの状態を正確に評価します。手術適応がある場合は手術の提案を致します。埋没法が適応になる場合はご希望があればその日のうちに処置を行います。切開法が適応となる場合は手術予約を行います。

  • 手術

    埋没法の場合は10分程度の処置で終了します。切開法の場合片眼、両眼にもよりますが概ね30分~1時間程度で終了します。

  • 術後の注意点

    術後2週間程度まぶたは腫れますので、あまり激しい運動や温泉につかるなど体を過度に温めることは避けて下さい。
    術後強く目をこすることは避けて下さい。
    コンタクトレンズの装用は術後1週間程度避けて下さい。

  • ダウンタイム

    術後1~2週間程度で抜糸を行います。埋没法の場合抜糸は不要です。
    術後1か月程度で概ね傷は落ち着いて来ますが、まぶたの腫れが完全に取れるためには3~6か月程度かかります。

よくある質問(FAQ)

逆さまつげの手術は痛いですか?
局所麻酔を行った上で手術を行うため、手術中の痛みはほとんどありません。局所麻酔の注射の際には若干の痛みがあるため、痛みをやわらげるために笑気麻酔を併用しています。術後に軽い違和感や腫れを感じることがありますが経過と共に改善されます。
手術後に逆さまつげが再発することはありますか?
適切な手術を行えば再発のリスクは低いですが、加齢などにより再発する可能性はあります。
逆さまつげの治療は保険適応になりますか?
まつげが眼球に接触して実際に目が傷ついている場合、通常保険適応になります。
費用はどのくらいですか?
保険診療による両目手術の場合、3割負担で約24000円です。

逆さまつげの診断・治療には専門的な知識と技術が必要です。是非お気軽にご相談下さい。