眼窩骨折とは

眼窩骨折は主にケガ(外傷)によって起こる疾患です。目に物がぶつかったり目を殴られたりすることにより目の奥の圧力(眼窩内圧)が上昇し、眼窩を構成する骨が折れる事により生じます。折れやすい箇所は大まかに2か所あり、下壁と呼ばれる上顎洞側の骨と内壁と呼ばれる篩骨洞側の骨です。眼窩骨折は眼窩底骨折、ブローアウト骨折などと呼ばれる事もあります。

症状の程度は様々ですが典型的には眼球運動障害による複視(物が二重に見える)、眼球陥凹(目がへこむ)、三叉神経第2枝領域知覚異常(上口唇のしびれ)などがあります。骨折の程度が軽微な場合や、たとえ折れていても眼窩脂肪や外眼筋の動きが制限されない折れ方の場合殆ど自覚症状を伴わない場合もあります。

骨折自体が軽微な場合や自覚症状に乏しい場合には手術に至らない事もありますが、特に複視のような症状が強い場合は症状改善のため手術を必要とする場合が多いです。
治療としては眼窩骨折整復術と呼ばれる手術があり、皮膚或いは結膜を切開して眼窩に入り上顎洞或いは篩骨洞に逸脱した眼窩脂肪・外眼筋を眼窩内に整復します。その上で、骨折・欠損した骨(眼窩下壁/内壁)をインプラントで再建します。

通常待機的な手術で問題ありませんが、主として小児に起こる筋絞扼型と呼ばれるタイプでは緊急での手術対応が必要になります。顔を(目を)ぶつけた子供が頭・目の痛みを訴えてぐったりとしており、救急車で総合病院の脳神経外科に運ばれて検査を受けたけれども頭にはなんの異常もなく、眼窩の骨が一部折れているようなので眼科に相談が行ったけれどもよく分からず・・・といったエピソードがよくある典型的な流れです。眼窩骨折の診断は通常CT撮影によって行いますが、特に筋絞扼型は眼窩骨折の診断・治療に精通していないとCT画像を適切に読影する事自体が困難です。また、骨折していて自覚症状があるにも関わらず受傷から長期的(数か月以上)に放置された場合、内部的に組織癒着を起こすためその後手術を行ったとしても治療効果は限定的となる事が多いです。

眼窩骨折の外科的治療に際しては適切な診断、適切なアプローチ、適切な整復、適切な再建を行わなければ眼球運動が改善しない、場合によっては悪化する事もあります。経験のある術者によるこれらの十分な見極めが重要になります。

眼窩骨折整復術(内壁)

  • 術前
    術前のイメージ写真

    左眼内直筋が篩骨洞側に大きく逸脱している

  • 術後
    術後のイメージ写真

    左眼内直筋は眼窩内に整復され内壁も再建されている

眼窩骨折整復術(下壁)

  • 術前
    術前のイメージ写真

    右眼下直筋が眼窩脂肪と共に上顎洞側に逸脱している

  • 術後
    術後のイメージ写真

    右眼下直筋は眼窩内に整復され下壁も再建されている